メイキング オブ 「きぼう」.1

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    幕張メッセで開催中の宇宙博、会場中央に存在感をギラギラさせている「きぼう」日本実験棟。
    前回ここでその実物大模型を弊社で作らせて頂いたことを発表しました。

    今回はその製作の裏側を一部、ご紹介していきたいと思います。
    宇宙開発において様々な部品が希少で高品質な材質を取り入れているのに対し、海老名産の「きぼう」は手に入りやすい身の回りにある物で出来ています。
    何を何で作るかを考えるのは製作において大きな要素の一つです。これを読めばあなたにも「きぼう」が作れる!

    製作のお話があったのは一年前になります、その時点でそれを実現するには今の工場だけでは狭すぎて別棟を設ける必要がありました。
    だからまず始めにしたことは物件探しからでした。丁度近くに充分な大きさの倉庫が空いており都合よく目の前にはお付き合いのある運送会社もありました。
    メッセへの運送もスムースに出来ます。これで製作環境に無理なく作ることができる!と幸先よく契約したのですが、それでも工期後半ともなると作ったものが増え、結局は二つの工場とも手狭になり作業スペースの確保に苦労しました、まあいつものことですが。

    企画、設計が進められ本格的に製作に入ったのは今年に入ってからです。作るものを大まかにいうと、本体実験棟は、フレーム、外装パネル、床、実験ラックと、右舷部にあるエアロック。それから保管室のフレームとパネル。
    船外実験プラットフォームは本体と実験装置の箱、ロボットアーム、「きぼう」本体とを繋ぐ結合機構(EFBM)でしょうか。

    それらをトラックで運べるサイズに分けることが出来、現場の組み立てが容易に行える使用にしなければなりません。設計はそこまでを踏まえます。

    製作は、弊社でも過去にないほど長い半年ほどの工期のなかで、それらを同時に作るというよりは全員で一つの作業にとりかかり、それを終えたら次のものへと移っていくという形になりました。
    その一連の作業のなかで作業の大半を占めた業務が幾つかあり、それで大まかな区分けが出来ます。

    名づけて…
    外装パネルリベット打ちまくり期、
    実験ラック樹脂板切りまくり期、
    船外実験装置白い布貼りまくり期

    そのどれもが気の遠くなるような分量です。スタッフの忍耐力が試されました。

    これから主な作業を語っていきたいと思います。
    始めに外装パネルリベット打ちまくり期。
    見る人に「きぼう」と認識してもらうには外装のディテールが命です。パネルの材質は軽くて加工のしやすいアルミ複合版を使いました。表面がアルミなので実物と同じ印象です。
    実物にはあるパネル自体の強度を出すためのリブ加工(パネルについた線状の突起)が技術的に表現出来なかったので、この内部構造物とパネルを固定するために使われたであろう無数のリベットの点線は表現として必要不可欠でした。そうです、ゼロ戦だって船だってこのリベットの点々さえ付いていればリアリティが増すのです。



    実物と同じ区分でパネルを切り出し飾りのリベットを打っていきます。本体、保管室合わせて270を超える枚数に、多いもので一枚310個のリベットを打ちます。
    下穴を空け、表から玉を差込み、ピンをかしめ器具で引っ張ると板の裏側にこぶがつくられ固定する、ブラインドリベットを使いました。ピンはかしめた後、切り取られるので
    作業のあとピンが残ります。終ってみれば2万5千個をかしめきり、一斗缶いっぱいのピンゴミ。ここまで溜まるとピンの再利用を考えてみました(まとめて剣山、数個をくっつけて巻き菱?)が現実的なものが思いつかず、結局は産廃へ。



    その後、鉄工所に外注していたフレームに取り付けていくのですが基本円筒形ですので大きいパネルは端から付けていけばしなる素材なので問題ないのですが、フレームに固定
    しないパネル、小さい大きさのパネルはあらかじめ丸く、くせを付けておく必要がありました。
    そこで単管パイプ3本でそのパイプの間にアルミ複合板を通すとカーブ状にくせがつくローラー曲げ器を作りました。円筒フレームがない保管室や右舷、左舷等の緩やかな円錐状のパネルはこれで対応できました。時には道具から作る必要があるのです。



    次に実験ラック樹脂板切りまくり期。
    外装が終ると次は内装です、実際のパネルの区分に合わせ輪切り状にフレームを組み立てられるようになっていますが、実はその一区分と同じ大きさに左右と天井部(実物は下にも、というか上下のない無重力なので四面)に実験ラックがついています。
    ベース部、左右外装とそれに相応するラック、それと屋根部がくっついて一つのユニットになるようになっています。



    ラックは六つのユニット分のラック、計18個つくりました。それぞれに役目があり、機械を操作したり観測や通信、物資を保管するもの、何もない未使用のラックもありました。表面的ではありますが一つ一つ資料を見ながら再現します。
    実際の写真を見ると配線や装置の一部が通路に飛び出てごちゃごちゃしていますが展示なのである程度は省略し、手に触れない様に前面にアクリル板でカバーしました。
    それでもそれぞれの質感に合わせ様々な材料を細かい形に切り出し張り合わせ再現します。
    ラックをベニヤで箱を作るところからはじまり、先ほどのアクリル、塩ビ、ABS、アルミ等々。
    幾つかのラック、部品は機械加工の出来る会社に外注し、電子制御のレーザー加工された部品などでクオリティの高い仕上がりになっています。
    ハイテクな機材に疎い弊社は、それら同じ作業をジグソーや卓上バンドソーで切り出し、板の小口をサンドペーパーで仕上げるというアナログ作業で行いました。
    どのラックを担当したかは念のため、ここでは申し上げないようにしておきます(そんなに仕上がりに違いはないはず!多分…)。



    そして船外実験装置白い布貼りまくり期。
    私たちが携わる展示スペースで船外実験プラットフォーム始め、「きぼう」本体から外の部分もかなりの面積があります。プラットフォームのまわりには小さい実験機が5つ付いています。それぞれ異なる役目があり、形状も違います。その大部分は箱状の筐体に白い布が覆われています。
    この白い布、実際は中身の装置を宇宙の過酷な熱環境から守る断熱材で、ベータクロスというガラス繊維にアルミ蒸着し表面はテフロン加工した大変高価な布で出来ています。
    今回、その純白で重厚な質感は防炎シートを用い再現しました。このビニールっぽい布、それだけだとただの布なのですがこうしてそれっぽく包むと不思議とリアリティが
    出てきます。ただ、細かいパーツにまで丁寧に被せてあるので大変です。本体箱ものはベニヤ、細かいパーツやロボットアームなどは発砲スチロールで形を作りそれらを徹底的に布で巻きました、幅1,8メートルのロールで100メートルを超える量を使いました。



    布を本体に固定するのに両面テープや釘を使いましたが一部はのりつきのマジックテープを使いました。これは実物の実験機でも大部分で実際にマジックテープが使われリアリティがあるからなのですが宇宙空間にこのおなじみのマジックテープ、なんだか意外な気もしますが実はそれは逆で、宇宙空間での使用に都合がよく積極的に使われ宇宙専用に開発されたりもしたみたいです。

    こうして何度かの検査を乗り越え完成に近づいてきましたが、作りながらあらためて思うことは私たちのこの作業以前に実際に本物が作られていたということです。
    何を当たり前のことを言ってるんだと思われるでしょうが、それこそ前例もなく、成功する確証がない中で、あらゆる問題と可能性を極限まで洗い出し、世界有数の知識を集め計画し、ネジの一つから注意を払い、沢山の人の地道な努力、私たちとは比べられないほどの気の長い作業をへて無事、宇宙に旅立っていったということです。
    完成までにクリアしなければならない星の数ほどの項目がどれも確かに人の手によって対処されたのです。それ相応の情熱があれば人の作るものに不可能などないのだとリベットや防炎シートを扱うたびに、その偉大さを思うのでした。

    とはいえ目の前の仕事です。さあ、いよいよ現場設置です!続きます。